あるいは本でいっぱいの海

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主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

ストレスの向先について(『ごきげん保険』星新一)

 「妖精配給会社」(新潮文庫)収録のショートショート。どんなに些細なことにでも不満を感じたと電話をするだけで保険金が下りてくる「万能生活保険会社」。そんなサービスに夢中になっているエヌ氏という男の話です。

 一つの電話につき、いくら保険金がもらえるのかは書かれていませんが、エヌ氏は半ば無理矢理に不平不満を見つけては報告します。その内容は以下になります。

 

◆万能生活保険会社で保険金が出るストレス事例

・夜近所のネコがうるさくて眠れなかった
・上司に説教された

・電車の中で美人に何度もウインクをしたが、いっこうに反応がない
・野球の贔屓チームが負けた

・ドラマの中で人が死にすぎる

・ドラマの中で人が死ななすぎる
・どうして早くこの保険の勧誘に来なかったのか、などなど

 

 待ちに待った保険金の振込日。その月にたまった保険金の金額を見てエヌ氏は喜びます。そして、たまった保険金にその月の給料を上乗せした金額を払うだけの価値のある生きがいがエヌ氏にはあるのですが、それは一体...?

 

 星新一の中でも、ユーモアに富んだ作品の一つです。気になって少し検索してみたのですが、「愚痴聞き」や「話し相手」のバイトやお仕事はたくさん出てきました。もちろんのことではありますが、匿名の人に愚痴を聞いてもらうアプリやサービスもたくさんありました。その他にも、ストレスが原因となる病気への保険も既にあるのなんですね。
 

 ストレス社会、コミュニケーション不足、拝金主義など、このショートショートから連想されるキーワードは様々ありますが、この中でも「ストレス」は果たしてなくなるものなのでしょうか。

 この作品にしても、医者の不養生と言われるように、万能生活保険会社のオペレーターは相当ストレスが溜まりそうです。人間には適度なストレスが必要とも聞きますが、社会全体としてこの問題を解決する方法はそう簡単には出て来そうにありません。

 

 「あ...」と書きながら私は気づきました。表題作の「妖精配給会社」にはその解決策が書かれていたかもしれない...

 というわけで本作含め「妖精配給会社」、おすすめのショートショート集です。 

 

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