あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「何も起こらない」が起こる(『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット)

「不条理演劇」の代名詞にして最高傑作 と帯(白水社、安堂信也 高橋康也訳)で紹介されている、二幕構成の戯曲です。前半は延々と続くナンセンスな会話に戸惑いましたが、二部に入った頃にはすっかり癖になってしまいました。 舞台は夕暮れの田舎道、一本の…

PLANET OF THE BIRDS(『鳥人大系』手塚治虫)

手塚治虫の長編漫画です。全19章の短編が合わさって一つの大きな物語になっています。角川文庫出版の文庫本サイズのものを持っているのですが、10匹の鳥の絵が描かれている表紙からは、ディストピアな内容であることなど想像もつきません。 とあるきっかけで…

ポスト2045年問題(『過渡期の混乱』星新一)

「さまざまな迷路」(新潮文庫)収録のショートショートです。タイトルからも分かるように、何か新しいものが生まれることで生じる、人々の混乱の様子を描いています。 いつのころからか、街頭にキャンディー売りロボットがあらわれるようになった。 という…

転がる石のように(『堕落論』坂口安吾)

『堕落論』(集英社文庫)の表題作。裏表紙の紹介では 生きよ、墜ちよ。生の現実から目をそむけず、肯定せよ。堕ちることのほかに真に人間を救い得る道はない、と説く。 と書かれています。 書店には、のんびり、あるがままに、とかフリーランスでもやってい…

簡単そうで難しい問題(『恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?』レイ・ブラッドベリ)

「恐竜物語」レイ・ブラッドベリ(新潮文庫)に収録されている短編小説です。それにしても、何て素晴らしいタイトルなんでしょう(笑) 主人公のベンジャミン・スポールディングは恐竜が大好きな12歳の少年です。友達に「大きくなったら何になりたい?」と聞…