あるいは本でいっぱいの海

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主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

メイキング・ショートショート(『できそこない博物館』星新一)

 星新一さんのエッセイの中でも特にお気にりの一冊。千編以上のショートショートを書いてきた著者自らがその創作メモ、ボツになった作品について紹介し、考察・解説していくというファンにとっては非常に嬉しいエッセイ集です。

 

 

 星新一作品は、本書「できそこない博物館」や「進化した猿たち」(最近リニューアル版が出てましたがやっぱりオリジナル版が復刻してほしい)、「きまぐれ星のメモ」などのエッセイの方が何度も読み返してきた覚えがあります。

 

 紹介されているのはちょっとした思いつきのような一言メモから、ショートショートの一編として発表していてもおかしくはない程に話がまとまっているものなどバリーエション豊富。他にも執筆の参考にと著者が残していた新聞の切り抜きなども紹介されています。

 

『ほかの作家だってたぶん同じだろうが、私にとって短編をひとつ書くのは、大変な作業である。これだけ書いてきたのに、いまだにこつがわからない。』

 

 それをあなたがそう言うのか!?という思いもありますが、出だし早々こんなことを書いています。

 千編を超える物語を作ってきた作家なんだからさぞかしアイデアが湯水のように湧いてくるのだろう、なんて思ってしまうものですが、このエッセイを読む限り全然そんなことはありません。思いついたアイデアをひたすら原稿用紙裏にメモし、他のメモと見比べては新しい組み合わせや使えそうなものを延々と検討する...という作業を繰り返していたようです。そして、「今日はもうだめだ」と諦めかけた瞬間にふといいアイデアが思い浮かぶ、という誰もが多かれ少なかれ経験してきたであろう方法です。そうは言っても千以上の物語なんて思いつかないものですが...

 

本エッセイに収録されている創作メモのほとんどはそれまで世に出ていない話ですが、中には

百人の泥棒。

といった、無事ショートショートとして発表された作品の初期メモも紹介されています。これは文庫本表題作にもなっている「盗賊会社」ですね。

 

 星新一エッセイの中でよく語られている(と個人的に思っている)「アイデアとは異質なもの同士の組み合わせである」をまさに実践しています。また、本作品中で語られる創作過程を読むことで作者の考え方の癖?もわかる気がします。

 

そのうち時間をとって、ショートショートを全作読み返したいものです。

 

↓ 星新一他の作品

 

okserver.hateblo.jp

 

 

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