あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

全ての闘う人に(『REFLECTION』その1 Mr.Children)

Mr.Childrenの18thアルバム『REFLECTION {Naked}』の感想です。3回に分けて全曲分書きます。

 

1. fantasy

 BMWのCMで流れていただけあり、疾走感のあるイントロから始まる曲。
 夢の国だったり妖精が出てきたり、というものではなく、あくまで現実世界での日常を舞台とした(ダーク?)ファンタジーです。それでもサビの部分では現実という旅を続けていこうという意思が皮肉交じりに歌われています。

 「IDカード」や「各駅停車」など、歌詞で使われるには珍しいワードが入っているのが特徴的です。
「想像を超えた猟奇殺人さえ今や日常 ドキュメンタリー」という歌詞がありますが、小説や漫画にあるようなファンタジーの世界の住人からすれば、こちら側の世界だって、奇妙なものに違いありません。

2. FIGHT CLUB

 曲名の通り、映画「ファイトクラブ」をテーマとした曲です。曲中でも

そしてお前はファイトクラブでブラピが熱演してた イカれた野郎に憧れてた

という歌詞があり、映画と重ね合わせて聞くと面白いです。

 まあ、たしかにブラピ演じるあいつはイカれてました(笑)。ブラピじゃない方もなかなか危なかった記憶がありますが。

 また、サビの「仮想敵見つけ そいつと戦ってた」という歌詞は、映画後半のあの衝撃的なシーンを彷彿とさせます。

 きっと誰の心にだって、「ファイトクラブのブラピ」のような存在が眠っているのでしょう。曲中に出てくる「お前」「俺達」というのは自分自身のことだと思っています。

3. 斜陽

 タイトルは太宰治の「斜陽」から取ったそうです。この小説を読んだのは何年も前なので細かい部分は覚えていませんが、ゆっくりと滅びていくのを味わうような、美しい印象を当時読んだ時に受けました。

 この曲を初めて聞いたとき、歌謡曲のような雰囲気で、歌の焦点がつかめないような 感じでした。この曲には「僕」も「君」も登場せず、景色を歌っているからだと思います。

 太宰治とはまた違う、また日が昇ることを確信しているように力強く前向きな「斜陽」です。 

4. Melody

 本アルバム中でも一番ミスチルらしい曲だと思います。

「クリスマスみたいに光る 」と、クリスマスではなくても素敵なメロディがあれば幸せな気持ちになれる、という感じの曲です。アルバム名が「REFLECTION」だけあって、光が反射・散乱するイメージを持たせる表現がアルバム全体として多く含まれている気がします。

5. 蜘蛛の糸

 「 斜陽」が太宰治なら、今度は芥川龍之介です。

 「I ❤︎ U」収録の「隔たり」という曲の続編と勝手に思っています。

 「隔たり」には「君は美しきスパイダー 羽虫が僕」と歌う部分がありますが、その頃はまだ、「僕」が飛び込んだ先は二人を結びつける"赤い糸"でした。今ではほどくことのできない"蜘蛛の糸"に変わったのです。

6. I Can Make it

 少し暗い曲調の、RADIOHEADでありそうな曲です。

 頑張ってはいるもののなかなかうまくいかず、自身も持てないという歌詞は本当によくわかります。根拠はなくても自信さえ持っていれば成功するようことはたくさんあります。この曲にならって"I Can Make it"と自分に言い聞かせていきたいものです。

7. ROLLIN' ROLLING〜一見は百聞に如かず

 「everybody goes〜秩序のない現代にドロップキック〜」や「横断歩道を渡る人たち」のように、様々な人について歌っています。
 今回は足を止めて聞いてもらうために、「一見は百聞に如かず」なんていうめちゃくちゃな言葉で誘い、とある働き者の男の話と綺麗な声を持つ少年の話を始めるのです。どちらも反面教師にもならない、取るに足らない話です。はたしてこの歌をどう終わらせるのか?そして、「ROLLIN' ROLLING」というタイトルに意味はあるのでしょうか?

そして最後のサビへ。

「そうだ ROLLIN' ROLLING!!」と桜井さんは叫びます。「そうだ」と言って、本タイトルをここでやっと決めたのではないでしょうか?笑

結局「百聞は一見に如かず お前の目で見ろ!!」というまさかの展開で曲は終わります。

 

その2に続く。

 

okserver.hateblo.jp