あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

ブラッドベリ

2018年の終わりに(『九年目の終わりに』レイ・ブラッドベリ)

ブラッドベリ「瞬きよりも速く」収録の短編です。 ある日、妻が夫に向かって「9年の月日が経ち、体中の全ての細胞が入れ替わった。私はもう別人だから、旅に出るわ」と言い、行くあてもなく家を出ようとする。 「それは離婚したいということなのかい?」夫は…

古代生物のジレンマ(『霧笛』レイ・ブラッドベリ)

ブラッドベリの短編集『太陽の黄金の林檎』(ハヤカワ文庫)に収録されている短編です。 灯台守である「ぼく」と灯台守の先輩・マックダンが体験した不思議な夜の出来事を描いています。 霧笛(むてき)とは、霧が深く視界が悪い時に、船が衝突しないよう音…

簡単そうで難しい問題(『恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?』レイ・ブラッドベリ)

「恐竜物語」レイ・ブラッドベリ(新潮文庫)に収録されている短編小説です。それにしても、何て素晴らしいタイトルなんでしょう(笑) 主人公のベンジャミン・スポールディングは恐竜が大好きな12歳の少年です。友達に「大きくなったら何になりたい?」と聞…

奇妙な親孝行(『二人がここにいる不思議』レイ・ブラッドベリ)

ブラッドベリの短編集『二人がここにいる不思議』(新潮文庫)の表題作です。 恋愛小説を思わせるような美しいタイトルですが、この物語における「二人」とは主人公の両親のことです。主人公の「おれ」が、既に亡くなっている両親をレストランに招待する話な…