あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

巻き戻しの海を(『醒めない』その2 スピッツ)

 前回に引き続き、スピッツ『醒めない』の感想の後半です。

 

8. ハチの針

 前曲のアウトロから少し間をおいて、この曲は始まります。
 ハチミツではなくハチの針。カタカナ表現でちょっと可愛い気のあるタイトルですが、いたってクールな曲調です。

 歌詞はというと、魔女や地獄、亡霊と、物騒な言葉が耳に残ります。
 何か強大なものに立ち向かわざるを得ないような状況下で、その事態に怯えるのではなく、最終兵器として「ハチの針」を隠し持っているようです。

 ところで、分厚い皮を持つ巨大な動物・ゾウは小さな虫であるハチを恐れるという話を聞いたことがあります。この曲の歌詞中にある「どでかいヤツ」とは正にゾウのことで、ハチという「小さな生き物」の意地や力強さを歌っているのだと思います。

 

9. モニャモニャ
 初めてこの曲名を見た時、ムーミンに出てくるニョロニョロが頭の中に浮かびました。

 モニャモニャとは「一番の友達」であり、「撫でるとあったかい」らしいです。

 ジャケットに写るあの生き物のことなんでしょうか。ゆったりとして癒される曲です。

 

10. ガラク
 出だしから聴こえるガチャガチャとした音が心地よく、その独特な歌詞もあって、聴いていて楽しい曲です。
 この曲ではガラクタ=過去の恋を意味しているのだと思います。しかし、ガラクタと歌いながらも、それは今もゴミ箱の中でキラキラ輝いているのです。
 これは「男は名前をつけて保存(今回はその保存場所がゴミ箱ですが)、女は上書き保存」というものなのでしょうか。

 

11. ヒビスクス
 個人的には日常的なイメージの曲が多いこのアルバムですが、この曲を聴くと何か現実と少し距離を置かれた感覚になります。

   優雅に風に押され空を飛びながら、白い花畑を眺める壮大なイメージです。

 

12. ブチ
 これまた変なタイトルの曲です。
 「惑星のかけら」収録の「オーバードライブ」という曲と似ています。相手の短所も笑い飛ばし、受け入れる感じ。でもこの曲は、破茶滅茶な歌詞のおかげか「オーバードライブ」と比べて少し地に足ついてない感じもします。笑
 

13. 雪風
 歌詞、メロディ共に美しい曲です。
 2局目の「みなと」とも似た雰囲気があります。「みなと」では再開を歌っていますが、この曲は過去を向いています。

まばゆい白い世界は続いてた また今日も巻き戻しの海を エイになって泳ぐ

この曲の出だしなのですが、とても素敵な歌詞です。これだけで情景が頭に浮かびます。

  

14. こんにちは
 前曲でしんみりしたところを明るく締めくくる、このアルバムのエンドロール曲です。
 1曲目ではなく最後に持ってくるところが面白い。とにかく前に進もうという気にさせてくれます。

 

『醒めない』その1 はこちら

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