あるいは本でいっぱいの海

あるいは本でいっぱいの海

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

ボコノン教入門書(『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット・ジュニア)

ハヤカワ文庫出版のカート・ヴォネガット・ジュニアの長編です。
主人公・ジョーナがボコノン教という架空の宗教に入信する道のりを描いた物語です。

 

あらすじ

主人公・ジョーナは『世界が終末をむかえた日』という原子爆弾が日本に落とされた日についてのノンフィクションを執筆するための準備を行なっていました。原子爆弾の発明者である故人のフィーリクス・ハニカー博士の息子に会うために、カリブ海にある架空の島「サン・ロレンゾ共和国」に向かいます。

 

やがてジョーナはボコノン教という宗教の存在を知ることになります。

ボコノン教とは、サン・ロレンゾ共和国では国家的に信仰が禁じられている宗教です。信仰が発覚した教徒は鈎吊りにされてしまいます。(鈎吊りについてもある秘密が判明します)

 

ボコノン教の教えは ユーモアや皮肉に満ちており、奇妙な専門用語がたくさん登場します。

例えば、ボコノン教徒は人類というものがたくさんのチームから成り立っていると信じており、そのようなチームを<カラース>、人をその中に組み入れる道具を<カンカン>と言います。

 

主人公・ジョーナはその後の経緯でボコノン教に入信することになるのですが、彼が元々執筆しようとしていたような衝撃的な事件に巻き込まれることになります。

 

感想

作中で頻繁に登場するボコノン教の教えや詩はナンセンスなユーモアに富んでいます。キリスト教圏で生活している人にとっては、きっとそれ以上の、自分の宗教との対比による面白さがあるのではないでしょうか。

 

サン・ロレンゾ共和国、ボコノン教、アイス・ナイン(物語において重要な役割を持つ融点45℃の物質)など、奇妙な架空の設定がてんこ盛りです。さらには、主人公を除いて、登場人物はおかしな人ばかりで、そのくせ宗教や科学、哲学、政治など、作中で扱われるテーマは多岐に渡ります。

 

本作、私はとても楽しんで読むことができたのですが、英語圏の人には分かるジョークやを多く見逃していることは間違いないと思います。例えば、タイトルでもある猫のゆりかごについての部分はいまいち分かりませんでした。それでも何か文章以上のものを読んでいるような感覚を味わえる、数少ない作品であると思います。