あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

サバイバル小説2020(『日本沈没2020』原作:小松左京、ノベライズ:吉高寿男)

 文春文庫出版の、Netflixのアニメ「日本沈没2020」の小説版です。原作は小松左京の代表作「日本沈没」であり、物語の舞台を現代に移してのリメイク版だと思い読んでみました。

 本屋でふと見かけて購入した時点では、日本沈没がアニメ化していることを知らず、この文章を書いている今もまだアニメの方は見ていません。

 

 原作との共通点は、厳密には災害の種類やメカニズムも違うようですが、「日本が沈没すること」です。

 それ以外は、全く別の作品といえます。

 

 原作の日本沈没では、人類が経験したことの無いレベルの大災害に対する、学者や政府の視点で描かれていました。本作「日本沈没2020」では、ある日大震災にあった一般市民の目線で描かれており、被災の様子をリアルに描いたというよりかは、もはやサバイバル小説でした。

 

 1970年代に日本が沈没することと、インターネットが普及し、国家間のボーダーが当時よりも低い現代において日本が沈没することの違いを作品の中で表現しているところを見たかった、というのが正直な感想です。具体的にどういう事態になるのか、良いアイデアがある訳ではありませんが。

 

 本作では、物語の細部に対しては正直ツッコミ所が多かったのですが、TwitterYouTubeなどのワードが登場する小説をほとんど読んだことはなかったためその点斬新でした。私が普段読む小説の登場人物たちは、スマホどころかガラケーすら持っていません。。

数十年後にも名作として残るような、 YouTuberが活躍する小説などあれば、ぜひ読んでみたいので、どなたかぜひ教えていただきたいです。

 

揺らいだものも多数(『ゆるぎないものひとつ』B'z)

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B'zのバラード曲「ゆるぎないものひとつ」。『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』を見たのですが、その映画の主題歌です。

 

力強いメロディもさることながら、ストレートな歌詞もお気に入りの一曲です。

 

笑いながら別れて 胸の奥は妙にブルー 言いたいことは言えず

出だしのこの歌詞が特に気に入っていて、このモヤモヤした感覚はよくわかります。何も進まないまま一日が終わるなんていう、まるで今年のGW連休のようです...

 

ゆるぎないものひとつ抱きしめたいよ

誰もがそれを笑ったとしても

 

「ゆるぎないもの」とは何か、もちろん人それぞれ違うことは間違いありません。ヴォーカルの稲葉さんは何かのインタビューで「ゆるぎないものはB'z自身」と言っていた記憶があります。

 

新型コロナの影響で、個人から社会のレベルまで、いろいろなものがゆらぎつつある気がします。今年の初めと今では生活スタイルや働き方など大きく変わってしまいました。個人的にも「ゆるぎないもの」を再構築しないといけない気がしています。GWの連休中も、規則正しい生活をしていましたが、気持ちの面ではかなり緩んでしまいました。(笑)前向きに取り組んでいきたいと思います。

 

期間限定で、B'z公式チャンネルが過去のライブ動画を大量にアップロードしています。

ゆるぎないものひとつ』が収録されているアルバム『MONSTER』のライブも公開しています。

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非常事態ってやつも歓迎です(『ニシヘヒガシエ』Mr.Children)

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ある意味緊急事態宣言のおかげ?で、ミスチルYouTube公式チャンネルで懐かしいPVが続々と解禁されています。

 

ライブでも定番の一曲で、中盤のダークな曲のブロックでよく演奏される印象です。ライブでは2番の「この指とまれ」のところが特に盛り上がります。

 

ミスチルの同系統のシングル曲といえば「マシンガンをぶっ放せ」、「光の射す方へ」、「掌」、「フェイク」などでしょうか。

 

PVでは、歌詞に出てくる天使と悪魔になぞらえてか、音楽番組の中で、1番はビートルズ、2番は1970年代のロックバンドのパロディが演奏します。ブラウン管テレビと、皮肉っぽいジョークを言う司会者が不気味に映ります。

 

張り付けの刑になったって 明日に向かっていきてくんだって

たたじゃ転びやしませんぜって 非常事態ってやつも歓迎です

ニシヘヒガシエ

 

「張り付けの刑になったって」、「抗鬱剤をちょうだい」、「愛だ恋だとぬかしたって 所詮は僕等アニマルなんです」と、トゲのある言葉が目立ちます。しかし、歌詞全体としては意外とポジティブです。

 

「ニシヘヒガシエ」というタイトルを聞くと、なぜか宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出します。詩の中でも東西南北に駆け回る内容があります。また、どちらも共通して「慾」の無さを感じます。「ニシヘヒガシエ」では、生きることへの欲求以外の着飾った部分は全て振り捨て、必死で前へ進もうとしているようにみえます。

逆未知との遭遇(『もたらされた文明』星新一)

「悪魔のいる天国」(新潮文庫)収録のショートショート

 

舞台はとある星・ピル星。調査隊を乗せたロケットがついに帰ってきました。予定よりも遅くなった調査隊の帰還を、ピル星の住民たちはを固唾を飲んで見守ります。乗員たちの努力の結果、ロケットは無事に着陸しました。

 

調査隊員は、彼らが見てきた珍しい星について語ります。

 

一番印象に残った星に「地球」という星がありました。「地球」で接した奇妙な風習について語る。

地球人たちは、「カギ」というものを使い、他人が勝手に家に入って勝手に家の物を持ち出していくことを防いでいる、というのである。たしかに自分で頑張って働いたお金で品物を買うよりも、他の人の物をラクである。まさかそんなにうまい方法があったとは。。。

 

先日、アメリカ国防総省が撮影したUFOの映像を公開した、というニュースがありました。その真偽や公表した理由はわかりませんが。

 

SF作品などに登場するUFOの目的といえば、宇宙人が地球の偵察や侵略をするためです。おそらくははるか遠くの宇宙から来ている訳なのだから相当な科学技術を持っているに違いありません。

「人類史における科学の発展は争いとともにあった」とも言われますが、はたして犯罪や戦争などとは無縁のまま選択肢はあったのでしょうか。

 

地球も気づかないところで、どこかの星に大きな影響を与えている可能性もあり得ますね。

世の中知らない方が良いこともたくさんあるとは思いますが、少しだけ真相が気になります。

 

喉元過ぎれば(『味ラジオ』星新一)

「妄想銀行」(新潮文庫)収録のショートショート

放送局から配信される特殊な電波によって口の中の神経を刺激することで、 味のしないものを食べているときにも、様々な味を人々にもたらしてくれる「味ラジオ」。

テレビやラジオの番組表のように、スケジュールに沿って配信される味も切り替わります。味については不自由のないため、栄養を摂取するための食事と、味を楽しむための食事は切り離されています。人々は、栄養の摂取は味のしないパンを食べることで補います。

 

味ラジオで味わった料理の「本物」を飲食するためのレストランもまだ残ってはいます。しかしそれは、本物の食感や気になった味の実物を食べてみたい、という好奇心を満たすための位置付けです。

 

誰もが当たり前のように配信されるいろんな味を楽しんでいる際中に、ある異変が起こりました。なんの味もしなくなったのです...

 

「味ラジオ」という一種のインフラが失われた時やその復旧後、人々にどんな影響が生じるのか。

 

気軽に電車に乗ったり外食したりなど、今まで当たり前だったこともできなくなった今日ですが、元の生活に戻った時はどうなるのかは気になります。元に戻るのがいつで、そもそも以前と全く同じ状態に戻ることができるのかどうかはわかりませんが。。

 

味ラジオの便利さと相まって、作中の「異変」後の描写には怖さを感じます。「味」でないにせよ、なくなった時作中と同じ状況になるものはたくさんあり、これからもきっと増えていくに違いありません。