あるいは本でいっぱいの海

Or All the Seas With Books

主に書評ブログ。本、音楽、映画について書きます。

To BE CONTINUED…(『REFLECTION』その3 Mr.Children)

Mr.Children『REFLECTION {Naked}』最終回です。「WALTZ」から「未完」までのレビューです。

 

16.WALTZ

 全曲に続いてダークな曲。ライブでの映像が好きでした。マグリットの「ゴルコンダ」のような、次々と振るいおとされていく人たち。「繰り返される審査(テスト)」、「柔軟なとこが長所」「履歴書」と歌詞にあるように、見方によっては就活もこんな感じですね。

 2番のサビ以降の「ワルツに乗せ 悲しき遠吠え」とは就活がうまくいかなかったその後悔の気持ちのことでしょうか。それとも、童話の「赤い靴」のように、周りに流されて踊って止まらなくなっている状態なのかもしれません。    

 頭の中の「あきらめ」という名の亡霊 そいつを優しく抱きしめて 冷たい体を温めて 朝まで 静かに 踊って その後 この手で殺すぜ

という過激な歌詞がありますが、そもそも「あきらめ」とどうして一晩中踊る必要があるのでしょう。

 何年か前に「ブラック・スワン」という映画がありました。バレリーナであるヒロインが、「白鳥の湖」の邪悪な黒鳥の役をうまく演じようとするうちに、徐々に精神が崩壊していく様を描いた映画です。

 その映画ではヒロインは「あきらめ」ではなく、ライバルへの「嫉妬」やスターになりたいという「名誉欲」と一緒に踊っていました。この「WALTZ」という曲にも、自分の身を滅ぼしながら「あきらめ」と踊る様子は重なるものがあります。

17.進化論

 強く望むことや夢がこの世界を回している、ということを進化論になぞらえて歌った曲です。 

 「Q」収録の「Everything is made from a dream」という曲では 

やっかいだな 夢は良くもあり 悪くもなる てな訳で oh oh oh oh yes 僕らの手に懸かってたりして

と、その責任の重さに戸惑っている様子もありましたが、そのタイトルが通り、今のこの世界は人々の夢が形となったものである、という主張は変わっていません。 

18.幻聴

 過去のように宝島(ヒットチャートとか?)だけが目的ではなく、自分たちの音楽で誰かが喜んでくれさえすればそれでいい、という風に聞こえます。

 だからこそ、「やっと一息つけるねって思ったのも束の間 また僕は走り出す」と立ち止まることなく前へ進んで行くのです。

 自分を呼ぶ声をあえて幻聴と呼び、一からスタートを切る。聴いていて前向きな気分になる曲です。

19.Reflection

 本アルバム唯一のinstrumentalであり、同題曲。

 ジャケットの蜘蛛の巣に水がかかった写真や、アルバム全体を表現していると思います。どこか静かな場所で、ポタポタと落ちる水滴にいろんな人の日常が反射しているような情景です。

 本アルバムの曲は、全体的に雫に反射する光をイメージさせる表現の歌詞が多々あります。

20.遠くへと

 当てもなく車を飛ばす。何かを忘れるために?それとも新しい何かを手に入れるために?

 「友達のままで」という曲でも同じシチュエーションはありました。 告白してフラれたことを忘れるためにただただ車を走らせるのです。

 今回は、その理由は特に歌われてはいませんが、新しい生活や自分を求めていることはわかります。

 「友達のままで」が作られたのはもう20年以上前、シチュエーションは同じとはいえ、さすがに理由は違いますね。

21.I wanna be there

 本アルバム後半は、新しい場所への旅立ちをテーマとした曲が並んでいます。

thereとはどこかは分かりませんが、その先には

もしかしたら素敵な運命の人が(笑)

なんて、冗談を飛ばしています。

 旅立ちに思い残すところはないようで、

さみしそうに見送ってくれないか

とかっこつけているところが好きです。

22.Starting Over

 タイトルは「 最初からやりなおす」という意味。

 肥大したモンスターの頭を 隠し持った散弾銃で仕留める

という物騒な歌詞で始まります。このモンスターの正体を「虚栄心」や「恐怖心」、「自尊心」だと疑っていますが、Mr.Childrenがビッグバンドになった結果、自分たちだけでは制御できなくなったことを意味しているのではないかと思います。

 やっとのことでモンスターを追い詰めた後も、その目の奥にある「孤独と純粋さ」に戸惑いを覚えます。そのモンスターがいないと今の自分はいなかっただろうという気持ちもあるに違いありません。

 銃声が轟きますが、果たして「僕」はモンスターを仕留めることができたのでしょうか。それとも「飼い慣らす」道を歩むのでしょうか。

23.未完

 アルバム最後の曲名が「未完」。決してネガティブな意味ではなく、投げやり感を含みつつも、ただ真っ直ぐと未来に向かって行くという曲です。

 桜井さんは、本当に伝えたいメッセージを曲の2番の歌詞に書くという話を聞いたことがあります。曲は違えど「ノブナガ」というデモ音源を汲んでいて、「織田信長」が1つのテーマになっているのではないのでしょうか。

 この曲の2番サビにある

例えば僕は武将で慕った家来が寝返ったって良い

  という歌詞はこれはまさに「本能寺の変」のことですね。

 他にも、

「いっそ飛べない鳥の羽なんか もがれちまえばいい」

という歌詞も「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」と重なりますね。(ちょっと無理矢理かもしれませんが...)

  

 

 以上、3回に渡りましたがMr.Children『REFLECTION{Naked}』の全曲分の感想でした。ミスチルのアルバムの中でも指折りの傑作でした。